春の到来を知らせる香り
本日ご紹介するのは、ネロリです。
いつもあなたの暮らしに喜びをと願いながら、最高の精油を探し続けています。冬が終わりを告げた今、あなたにぜひご紹介したいのが、ネロリの香りです。フレッシュさと軽やかさ、そしてレモンを感じさせるグリーン、かすかにスパイスが効いたネロリの香りについて、今日はお話いたしましょう。
かつてモロッコに家を持っていた頃、ある春の朝にいつもよりも早起きして車を走らせていると、その途中、ネロリの花を収穫する人たちに遭遇したことがありました。一面に花開くネロリ畑の中で、彼らは花を摘み取っていました。ネロリはその日のうちに抽出作業が終えられます。その日はまだ早すぎて、その香りに遭遇することはできませんでしたが、後日、蒸留作業をする工場の周辺は一日中、甘くて官能的な香りが漂うのだと土地の人に聞きました。
Citrus aurantium var. amara L.
科名 : ミカン科
採油部分 : 花
収穫時期 : 3月/4月
CAS TSCA : 8016-38-4
INCI : Citrus aurantium amara flower oil
ネロリの精油は、鮮やかな緑色の葉を持つビターオレンジの低木に咲く花から、水蒸気蒸留法を用いて得られます。春になると、枝の下で白く厚みのある花を咲かせて、その木をすっかりと覆います。たっぷりと香りが含まれたこの花を摘み取り、そしてすぐに抽出作業が行われます。ネロリの名は、イタリアのブラッチャーノ侯爵夫人、プリンセスネロラにちなんだもので、彼女がその花の香りを愛し、身に纏っていたからでした。
ビターオレンジは、ベルガモットやオレンジと同じく、柑橘類の一種です。純粋さと無垢を象徴します。精油になったネロリからは、フローラルかつパウダリックな、なんとも麗しい香りが放たれます。ソフトなイメージと活力に満ちたイメージの2つを同時に感じさせるネロリ。レモン様のグリーンノート、ほのかなスパイシーノート、新鮮さ、空気のようなエアリー感、と実に様々な表情をみせてくれる香りです。
原産は東南アジアですが、地中海性気候に非常によく適応していて、18世紀から、南フランスにあるヴァロリスと美しい海岸で有名なジュワン湾の近辺の田園地帯がビターオレンジの木で覆われるようになりました。当時は、ビターオレンジがこの場所の名を広めるほどに栽培が盛んに行われていましたが、現在では、レバノン、チュニジア、モロッコが主な産地です。
土地と収穫年によって異なるものの、通常、ビターオレンジの花は、3月から4月にかけて、春の到来とともに開花します。夜が明けて露が降りた後、花は手でひとつひとつ、丁寧に摘み取られます。鮮度を保つために細心の注意を払い、摘み取られるとすぐに蒸留の工程に進められます。
ちなみに、ビターオレンジの果物の皮と葉からも精油は得られ、果皮から採油されたものはビターオレンジ、葉から得られる精油はプチグランと呼ばれます。
採油方法:水蒸気蒸留法
外観 :薄黄色から黄褐色の液体
主成分:リナロール、ベータピネン、リモネン、酢酸リナリル
使用方法:アロマテラピー、フレグランス類、化粧品類、食品
Jean-Claude DEYME