五月のバラ、ローズドメ

A&P LE JOURNAL MAI 2024

本日ご紹介するのは 、ローズ・アブソリュートです。

あなたの暮らしに喜びをと願いながら、今日も最高の精油探しを続けています。

幸福な春の日々を過ごしながら、 南仏グラースを旅した時、見渡す限りのバラ畑で風に乗ってやってきた芳香を吸い込んだ日のことを思い起こしました。その日の早朝、私は花を摘み取る様子とそれがアブソリュートという液体に姿を変えるまでの、ひとつひとつをこの目で見ることができたのです。

 

 

ABSOLUE ROSE(ローズ・アブソリュート

Rosa centifolia

科名 : バラ科
採油部分 : 花
収穫時期 : 5月、6月

 

世界のバラのほとんどは、ブルガリア、モロッコ、トルコで生産されていますが、ローズドメはフランス語で5月のバラという意味。南フランスの街、グラースで栽培される希少価値の高いバラです。ワインの味わいが土地によって異なるように、グラースの土地で独自の品質と香りが生み出されます。

花はもっとも香り高いタイミングを見極めて、5月から6月の早朝に摘み取られます。摘み取り人は花頭を根元から収穫すべく、同じしぐさを何度も繰り返します。

処理は、摘み取った花の繊細な花びらを傷つけないように、素早く行われます。生花をヘキサンで抽出し、その結果生成されたコンクリートをアルコールで洗い流すように精製して、バラのアブソリュートを採油するのです。

400キログラムの生花から、520 グラムのアブソリュートが得られます。収率は 0.13%ほど。非常に貴重な香料です。

こうして得られるローズドメのアブソリュートの香りには、はちみつのように甘くあたたかなローズノートがあります。大変魅力的ですがトルコ産のばらも見逃せません。スパイシーさをもった魅惑的なローズノートを持っているからです。

ギリシャの伝説では、バラがこの世に姿を現したのは、花の女神クローリスの仕業だとされています。彼女は荒野にニンフが死んでいるのを見つけて、それをバラに変えたと言うのです。いずれにしても、この花は太古の昔から人々の生活に根差し、かつ、誰もが認める美しさを持つので、バラにまつわる伝説の数は数えきれないほど存在します。そして、太古から今に至るまで、バラは常に愛の象徴とされてきました。

3000年以上前から歴史上で語られてきたバラの品種の数も、また、数えきれないほど存在しますが、香水に使用されるのは、センチフォリア種とダマセナ種のみ。バラは古代から香油をはじめとする、香りの品々を作る材料とされてきました。また、アテネでは宗教的にも用いられ、巫女たちがヴェールや髪にバラの香油を塗り込んでいたそうです。

バラの香料は、現代香水の製造にも欠かせません。シプレノートを形作る重要な香りです。水蒸気蒸留で採油されるローズ・エッセンスと、溶剤抽出法によって採油されるローズ・アブソリュートは、香水の処方において同時に用いられることが多く、ローズ・アブソリュートはミドルノートにおいて、ローズ・エッセンスはトップノートにおいて、重要な役割を果たします。

 

採油方法:溶剤抽出法

外観 :橙色~濃赤色の粘性の高い液体

主成分:フェニルエチルアルコール、シトロネロール

使用方法:アロマテラピー、香水、化粧品、食品

 

Jean-Claude DEYME