神に植えられた木

A&P LE JOURNAL FEVRIER 2025

本日ご紹介するのは、シダーウッド・アトラスです。

厳しい寒さが続く2月に思い出すのは、アトラス山脈を旅した時のことです。アトラス山脈はアフリカの北西部にあり、チュニジアからアルジェリア、モロッコに沿って地中海と大西洋の海岸線と並行に位置します。モロッコはセカンドハウスがありましたから、よく出かけたものですが、特に冬の寒い季節に出掛けると、この山には芳しい香りが漂っていました。

この山の育つ木々は、新緑の常緑針葉をもつシダーウッド・アトラスです。この木の幹の部分から、精油が抽出されます。香りは野性的な兄マリックノートも感じられますが、肌の温かさのようなやさしさも感じられます。

 

CEDRE DE L’ATLAS(シダーウッド・アトラス)

Cedrus atlantica

科名:マツ科
採油部分 : 木部(心材)
収穫時期 : 通年

記念碑のようにそびえ立つ雄大な木、シダーウッド・アトラス(アトラス杉)は、高さが40メートル、直径が2メートルを超えることもある大木です。生育途中はピラミッド型をしていますが、そのシルエットは年々変化して、しだいに太い枝が水平に広がり、平らな樹冠を持つようになります。針の形をした葉は、濃い緑色から青みがかった緑色をしていて、ロゼット状態に開いて短い枝に密集してつけられます。

シダーウッド・アトラスは、腐りにくいことでよく知られる木ですが、その有効成分がこの木が持つ芳香成分。精油として抽出されています。シダーウッド・アトラスは、保護対象とされている植物で、そのため、この精油の原材料を入手することができるのは、モロッコの製材所からのみです。入手元は、家具の製造を専門とする工場であることが多く、蒸留用のおがくずや丸太の削りくずを提供します。

Cedrus atlantica(シダーウッド・アトラス、アトラス杉)は、アトラス山脈のモロッコとアルジェリアが原産で、北アフリカとフランスに生息しています。香水に使われる主な木の種類は、これに加えた、バージニア杉(Juniperus virginiana)、テキサス杉(Jiniperus mexcana)の3種です。この3つのうち、シダーウッド・アトラスだけがマツ科で、その他はヒノキ科。ちなみに日本の杉は、ジャパニーズシダーウッド(Cryptomeria japonica)で、スギ科です。

聖書から読み解けるのは、シダーウッド・アトラスは、伝説を生む植物であるということです。樹齢2000年を超えることもあるからでしょうか。3つの宗教と結びついています。ユダヤ教徒にとってはエルサレムのソロモン王の神殿の建設に使われた木材であることから神聖な存在であり、キリスト教徒は健康を象徴する木、イスラム教徒は純粋さを示す木として捉えられています。聖書によれば、この木こそ、「アルズ・エル・ラブー神の木」です。なぜなら、神の手によって植えられた唯一の木だからです。


採油方法:水蒸気蒸留法

外観 :無色~褐色の液体

主成分:ヒマカレン、アトラントン

使用方法:フレグランス類、化粧品類、アロマテラピー、食品

 

 

Jean-Claude DEYME