長い冬
A&P LE JOURNAL JANVIER 2024
本日ご紹介するのは、ミルラです。
あなたの暮らしに喜びをと願いながら、今日も最高の精油探しを続けています。
冬の日々を過ごしながら、昔、ミルラの香りを追い求めて出かけたソマリアでの出来事を思い出しました。ミルラの幹は、節の目立つ特有の形をしていて、それらが乾燥した土地に、いくつも立ち並ぶ様子は、まるで地の果てのようだったのです。
ミルラの精油は、採取された樹脂を水蒸気によって蒸留して作られます。香水にも使用される高価な精油です。
Commiphora myrrha
科名 : カンラン科
採油部分 : 樹脂
収穫時期 : 1、7、8、9、10、11月
ミルラは最も古くから存在する精油の1つで、香りづけのためや宗教儀式に使用されてきました。紀元前2000年前に、すでにエジプトのパピルスにミルラの名が記されています。日本語では没薬と呼ばれます。
ミルラは、神々への捧げや、住居や衣服を清めるために使われてきました。また、防腐処理のためにも使われることがありました。聖書に記載されていることはよく知られていますが、イエス・キリストの誕生を知った東方三博士が贈り物として選んだものには、金と乳香に加えてもうひとつ、このミルラがありました。
ミルラは、砂漠から半砂漠気候に育つ乳香やエレミと同じカンザス科の木です。樹脂は強い香りを持ち、精油はその樹脂から採られます。現在の主産地は、乾燥したサバンナのソマリアです。
精油の生産はほぼ年間を通じて行われます。樹脂の収穫方法は、木の幹に切り込みを入れるというやり方です。樹脂が収穫されると、不純物を取り除く作業が行われ、その後、多くの場合は海外の蒸留工場に輸送されます。
水蒸気蒸留法によって得られる割合は樹脂の6~8%ですので、採油率はその他の香料植物に比べると非常に低いといえるでしょう。香りはバルサミコ酢のような甘みをもち、ローズマリー、レモンを思わせる芳香とスパイシーな側面を持ち合わせています。
Commiphora種のものは多数存在しますが、香料用として確認されているミルラの木は2種類のみです。ビターミルラ、ヘラボルミルラと呼ばれるCommiphora myrrhaと、スイートミルラ、ビサボルミルラと呼ばれるCommiphora erythreaの2つ。これらは非常にオリジナリティのある香りを持っています。
ミルラ「Myrrhe」という言葉は、ギリシャの伝説にちなんだギリシャ語のミラ「Myrra」に由来します。アドニスは、母親ミラの気がくるってしまったことから、彼女を死んでも生きてもいないものに変えて欲しいと神に頼み、ミラは木にされ、その木に神が彼女の名前を付けたという話です。
ミルラの香りは、秋の森の中の散歩を思い起こさせます。新鮮なキノコの香り、ウッディで苔のような香りを彷彿とさせる様子は、ノスタルジックな気分にさせられます。スパイシーな香りも感じ取ることができるでしょう。わずかにメタリックな側面や、甘草の香りも見つけ出せるのではないでしょうか。
香水にミルラが主に用いられるのは、オリエンタルのミドルノートや甘草(リコリス)の香りを引き立てたい時です。ウッディノートを強調させる役割も果たしてくれる、まさに天の恵みの香りです。
採油方法:水蒸気蒸留法
外観 :黄褐色~黄緑褐色の粘性を持つ液体
主成分:フラノユーデスマ-1,3-ジエン、クルゼレン、リンデストレン
使用方法:アロマテラピー、香水、化粧品、食品
Jean-Claude DEYME